講義科目と履修プラン(平成28年度以前)

必修科目

全員が共通して履修、修得する科目群です。必修科目は、卒業必要単位数128単位のうち70単位を占めており、序論科目や実験科目、プレゼンテーション演習、科学英語コミュニケーションなどのFIRSTでの学びの基幹となるものです。

序論科目

  • バイオサイエンス序論
  • ナノバイオサイエンス序論
  • ナノサイエンス序論
  • ケミカルサイエンス序論

上記4つの序論は、高等学校と大学での専門科目の橋渡しとなる導入科目です。それぞれの専門分野における学びの動機付けとともに、基礎専門科目(パック)の講義内容を理解するための基礎知識を学びます。たとえばナノサイエンス序論では、無機化学・物理化学関連科目への導入として、原子・分子の電子構造、電磁波の性質、光と物質との相互作用や固体の結晶構造について学びます。その基礎知識の習得により、自然科学における様々な現象(光の吸収や反射など)を本質的に解釈することができ、後に続く基礎専門科目におけるより発展的な内容を理解することができます。他の3つの序論ともお互いに密接に関連している部分もあり、4つの序論での学習を通じて「サイエンス」の学習基盤を作ります。

赤松 謙祐(ナノサイエンス序論)

基礎科目

  • 数学及び演習
  • 英語及び演習
  • 日本語表現及び演習
  • 基礎体育学演習
  • 安全倫理工学
  • プレゼンテーション演習1
  • プレゼンテーション演習2
  • プレゼンテーション演習3
  • プレゼンテーション演習4

FIRSTでは3年生から研究を開始します。研究活動では、実験計画、経過、結果などを教員や先輩に対してプレゼンすることが日常的に行われます。その集大成である卒業研究発表や就職活動はもちろん、就職後もプレゼンの連続といえるでしょう。FIRSTでは、卒業後にどんな方面に進んでも活躍できるよう、4年間を通じて“事実や特徴を正確にわかりやすく伝える”ための考え方をはじめ、資料作成や発表の技術を身につけていきます。1年次のプレゼンテーション1では、科学的資料の作成技術(細胞の働きを表す図、地球環境計測データのグラフ化、画像データの処理など)をしっかりと磨きます。また、授業内で発表の経験を重ねると同時に同級生のプレゼンを聴講することで、自らの発表のノウハウを掴んでいきます。

松井 淳(プレゼンテーション演習1)

  • 科学英語コミュニケーション1
  • 科学英語コミュニケーション2
  • 科学英語コミュニケーション3
  • 科学英語コミュニケーション4

サイエンスにおける共通言語は、英語です。最新の研究成果が発表される論文や国際学会での発表、海外の研究者との共同研究の相談や議論は、基本的に英語を用います。科学英語コミュニケーション1では、英語の文章を頭から順番に読み、聞き、素早く英語の意味を理解できるようにするため、主語と述語をしっかりと見極め、英文の形やつながりが自然に見えてくるように練習をします。この練習は、英文を素早く読んで理解するだけでなく、「英語でものを考える」練習にもなります。さらに、論理的な構成を考え、日本語で論理的な文章を書くことにもつながっていきます。受験英語とは全く異なる進め方で講義・演習を行うことで、英語に対する苦手意識を無くしてもらうことも、この講義の大きな目的であり、より実践的な科学英語力を養う科学英語コミュニケーション2、3、4への橋渡しを行います。

西方 敬人(科学英語コミュニケーション1)

教養科目

  • フロントランナー講座

実験科目

  • ナノバイオラボベーシックA
  • ナノバイオラボベーシックB
  • ナノバイオラボ1A
  • ナノバイオラボ1B
  • ナノバイオラボ2A
  • ナノバイオラボ2B
  • ナノバイオ卒業研究

実験科目では、ナノ(化学)系、バイオ(生物)系、ナノバイオ(生物・化学)系の3つ実験に十数人ずつを割り振って5週ずつ順番に取り組みます。1年前期に履修するナノバイオラボベーシックAでは、「有機化合物の分離精製(ナノ)」、「大腸菌を用いた遺伝子組換え実験(バイオ)」、「分光光度計を用いた緩衝溶液とDNAの性質調査(ナノバイオ)」実験となっています。大学に入って初めての専門的な実験であり、これまで使ったことのない器具や装置も使用するため、実験の予習は不可欠であり、その確認をする前試問も実施されます。また、実験が終わると、実験の報告書となるレポートも作成します。高校の時に実験経験の浅かった学生もこれを履修することで実験の基礎技術を身につけることができます。

甲元 一也(ナノバイオラボベーシックA)

選択必修科目

卒業必要単位数128単位のうち、必修科目の70単位を除く58単位は選択必修科目として割り当てられています。この科目は、合計58単位以上修得することが必要ですが、どの科目を選択するかは学生に任されています。ただし、履修する内容の過度な偏りを避けるため、基礎専門科目(12科目以上、24単位以上)、応用専門科目(7科目以上、14単位以上)、教養科目(3科目以上、6単位以上)を所定単位数ずつ修得するよう義務づけられています。

基礎専門科目(選択必修A群)

[バイオサイエンスパック]

  • 分子生物学
  • 遺伝子工学・バイオテクノロジー
  • 生命機能科学
  • 細胞工学
  • 薬理学
  • 発生学

[ナノバイオサイエンスパック]

  • 生化学
  • 生命分析化学
  • 生命物理化学
  • バイオ計測工学
  • 高分子化学
  • 生体分子工学

[ナノサイエンスパック]

  • 無機化学
  • 量子物理化学
  • 固体光化学
  • 電気化学
  • ナノテクノロジー
  • 生物無機化学

[ケミカルサイエンスパック]

  • 構造有機化学
  • 有機電子論
  • 有機反応各論
  • 有機化学と分光法
  • 生物有機化学
  • 有機合成化学

「生化学」は、生命分子と生命現象の結びつきを学ぶ講義です。タンパク質や糖あるいは脂質といった、生命現象にかかわる分子の構造を学び、生体内におけるこれら分子の役割を学びます。各種生命分子の生合成を学び、生体中の物質合成の知識を得ます。さらに、酵素の機能と生体内での活性発現を取り扱い、補酵素やビタミン或いは金属元素等の重要性も学習します。高校の生物と化学を合わせてそれを少し発展させた授業内容となっています。これから、ナノバイオ、バイオの様々な基礎科目、応用科目を理解していく上で、必要になる科目です。「生化学」を通して、論理的に思考する力や様々な情報を整理し系統立てて理解する力、発展内容を自習する力など社会で役立つ能力を養えるよう、工夫して授業を展開しています。

臼井 健二(生化学)

「薬理学」は、薬が効く仕組みを学ぶ講義です。薬が効く仕組みが分かると、どうすれば新しい医薬品を生み出すことができるのかを考えることができます。応用専門科目の「創薬テクノロジー」と併せて、様々な病気に対する新薬の開発が、どのような考え方に基づいてどのように行われているのかを学びます。この講義では、医薬品の化学構造と相互作用様式に基づく説明を通して、薬理を深く理解してもらうことを重視しています。薬学部が4年制の研究者養成課程と6年制の薬剤師養成課程を分離したことに伴い、以前より多くの理工系学部卒業生が研究者として製薬企業で活躍するようになりました。社会へ出て役立つ知識と考え方を伝えられるよう、また詳細な内容を自学できるよう講義内容を工夫しています。

川上 純司(薬理学)

応用専門科目(選択必修B群)

[先端テクノロジーパック]

  • ケミカルバイオロジー
  • バイオセンシングと環境
  • アドバンストマテリアル
  • 先端情報テクノロジー

[メディカルサイエンスパック]

  • メディカルサイエンス概論
  • 医療テクノロジー
  • 創薬テクノロジー
  • メディカルバイオテクノロジー

[サイエンスマネジメントパック]

  • 企業戦略・テクノロジー概論
  • 医療関連研究開発論
  • バイオ・食品関連研究開発論
  • ナノ・材料関連研究開発論

[コーディネーターパック]

  • 知財マネジメント
  • シーズ/ニーズマッチング
  • 国際産学連携コーディネーター
  • インターンシップ

「ケミカルバイオロジーって何?」と思われた方も多いと思います。ケミカルバイオロジーは、化学合成や化学的に合成したいろいろな分子を使って、生命の機能を解明したり、制御したりする学問分野です。新しい学問ですが、医薬品の開発や新しい生命機能の解明を最終目標として、物質の化学合成から細胞まで、非常に幅広い化学的知識と生物学的知識を総動員することが必要です。この講義では、タンパク質や核酸などの生体分子の化学的性質、生体分子と結合する化合物、細胞をイメージングする方法、などを系統的に学んでいきます。これまでに学んできたパックの選択必修科目が、医薬品開発等などの応用分野でも大切であることが理解できると思います。

三好 大輔(ケミカルバイオロジー)

教養科目(選択必修C群)

  • 科学と健康
  • 科学と情報技術
  • 科学とエネルギー・環境
  • 科学と芸術・哲学
  • 科学と歴史・文学
  • 科学と産業政策

キャリア・国際交流科目

  • ベーシック・キャリアデザイン
  • エリアスタディーズⅠ
  • エリアスタディーズⅡ
  • エリアスタディーズⅢ
  • エリアスタディーズⅣ
  • エリアスタディーズⅤ

※キャリア・国際交流科目は選択必修A群、B群、C群には含まれませんが、卒業必要単位128単位には含まれます。

卒業必要単位

FIRSTにおける卒業必要単位数は128単位以上と定められています。その内訳は、必修科目が70単位、選択必修科目が58単位(各2単位のため29科目)以上となっています。選択必修科目の履修に関しては、自分の将来のビジョンにあわせて履修プランを組み立てます。

1. 基礎専門科目(選択必修A群)の履修プラン

選択必修A群は24科目あり、12科目以上選択することが義務づけられています。卒業要件として、4パックのうち1つのパックをコンプリート(6科目すべてを修得)することが必要です。残りの3パックの科目をどのように履修するかは学生の考え方次第です。生物系、化学系、物理系の中から得意科目を集中的に履修するか、また、広く知識を習得するためにすべてのパックから興味ある科目を選択して履修する、あるいは、将来のビジョンに合わせて必要な科目をパック横断的に選択して履修していく、など、学生が自由に決めることができます。

2. 応用専門科目(選択必修B群)の履修プラン

選択必修B群は16科目あり、7科目以上選択することが義務づけられています。最新のテクノロジーを学ぶ「先端テクノロジーパック」、医療・創薬の応用技術を学ぶ「メディカルサイエンスパック」、企業の研究開発を企業の方に講義していただく「サイエンスマネジメントパック」、企業における技術の保護や活用に関わる「コーディネーターパック」など、基礎的な専門知識を応用へとつなげる講義科目が揃っており、学生の興味・関心に応じた履修を可能としています。

3. 自由選択枠となる7科目の履修プラン

選択必修科目29科目ののうち、基礎専門科目12科目、応用専門科目7科目、教養科目3科目を除く7科目は、基礎専門科目、応用専門科目、教養科目に加え、キャリア・国際交流科目の中から自由に選択、履修することができます。また、選択必修科目は29科目以上修得しても問題ありませんので、卒業単位以上に修得する学生も多くいます。基礎や応用、キャリア・国際交流科目にするなど、選択の幅は大きく広がっています。

実際の学生の履修プランについて、いくつかご紹介します。

私は小さな頃から科学全般にとても興味をもっていました。それもあって、高校でも2科目でいいところを化学、生物、物理の3科目すべてを勉強しました。大学に入ってもその考えは変わらず、科学に関する理解を深めるために、基礎的な専門知識を身につけることができる選択必修A群を中心にした履修プランを組みました。特に、FIRSTの特徴である複合領域のことは聞かなければ損だと思い、ナノバイオパックは1年から完全履修するつもりで、気がつけばバイオ、ケミカルを含めた3パックをコンプリートしていました。このようにして得た知識は、今行っている研究でとても役立っています。例えば、分子を合成する化学の知識も合成した分子を生体に使うバイオの知識なしでは効率が悪くなることも多くあります。使うことを考えながら作る視点は研究には欠かせません。

石田 隆真(1期生、大阪府立千里高等学校出身)

選択必修科目 パック 修得科目数
A群 バイオ
ナノバイオ
ナノ
ケミカル
B群 先端テクノロジー
メディカルサイエンス
サイエンスマネジメント
コーディネーター
C群
キャリア・国際交流

FIRSTでは1年前期の序論科目でバイオ(生物)、ナノバイオ(生物・物理・化学)、ナノ(物理・化学)、ケミカル(化学)の基礎的なことを学びます。このとき多くの人が自分に合った、または興味のある分野を見つけます。僕は物質を原子・分子レベルで扱うナノサイエンスと様々な化学反応を駆使して新しい分子を創造するケミカルサイエンスに興味を持ち、1年後期以降、この2つのパックを中心に勉強してきました。また、2年からはそれらの応用的な分野も学び、「将来こんな研究をして、こんな新しいことをしたい!」と、色々考えられるようになりました。2年、3年でたくさんのことを学び、考えた結果、物質をナノサイズで扱うことで新しく発現する特性を利用するナノサイエンスに惹かれ、僕は今、ナノ材料に関する研究を毎日楽しく行っています。

大橋 卓史(2期生、兵庫県立神戸高塚高等学校出身)

選択必修科目 パック 修得科目数
A群 バイオ
ナノバイオ
ナノ
ケミカル
B群 先端テクノロジー
メディカルサイエンス
サイエンスマネジメント
コーディネーター
C群
キャリア・国際交流

私は高校生の時から生物に興味があったので、1,2年ではバイオとナノバイオパックを中心に履修しました。ナノバイオは当初、どのようなことを学ぶのかイメージできませんでしたが、実際に受講してみると、高校でいう生物のことを物理や化学の概念を導入して総合的に学ぶ科目だと知りました。高校までは科目の間に大きな隔たりを感じていましたが、異なる分野の視点から見ることで、新たな発見があるのだと気づきました。その後、私は基礎と応用の専門科目をバランスよく履修することを考え、基礎科目の中では幅広い知識を修得できるナノバイオパックを中心に、その学びを活かす分野を応用専門科目で広く学びました。現在、所属している遺伝子薬学研究室ではバイオ系を専門としていますが、ナノバイオパックで学んだことを活かして卒業研究に取り組んでいます。

冨田 恵麗沙(3期生、兵庫県立伊川谷北高等学校出身)

選択必修科目 パック 修得科目数
A群 バイオ
ナノバイオ
ナノ
ケミカル
B群 先端テクノロジー
メディカルサイエンス
サイエンスマネジメント
コーディネーター
C群
キャリア・国際交流

私は高校の頃から材料化学やその応用技術に興味があり、選択科目では半導体や電池のような材料化学をベースについて学べるナノパックを中心に、バイオとの融合科目であるナノバイオパックも技術を応用する知識を得るために履修しました。これらのパックを取ってよかったことは分子運動やエネルギーといった材料を構成する原子、分子の基礎的性質について良く理解できたことです。ナノパックでは原子や分子の仕組みから電池等の応用技術を、ナノバイオパックではそれを数値として扱うエネルギーの計算原理などを学習できました。これらのパックは学習する範囲が重なることも多く、理解を深めることが可能です。どちらのパックも計算した数値で現象を考えることが多いため、計算を得意とする私には共に興味を持って学習することができました。

宇佐美 将彦(4期生、兵庫県立夢野台高等学校出身)

選択必修科目 パック 修得科目数
A群 バイオ
ナノバイオ
ナノ
ケミカル
B群 先端テクノロジー
メディカルサイエンス
サイエンスマネジメント
コーディネーター
C群
キャリア・国際交流
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