1年生の実験、最後に紹介するのは「アスパルテームの合成」です。
アスパルテームは、人工甘味料として広く知られている化合物ですね。
ノンカロリーとかカロリーゼロといった食品・飲料に使われているので、みなさんも耳にしたことがあるのではないかと思います。
本来私たちが甘いと感じるものは、ほとんどが糖なのですが、このアスパルテームはペプチド。アミノ酸が2個つながった構造をしています。
糖(グルコース)の構造
人工甘味料(アスパルテーム)の構造
糖とはぜんぜん違う構造なのに、甘く感じられるって不思議ですよね。
人工甘味料のほとんどは糖とは似ても似つかぬ構造をしているので、その発見は偶然によるものが多いようです。
本当の話かどうかわかりませんが、出張中の教授からの「Test it(調べなさい)」という電話の指示を、助手が「Taste it(味をみなさい)」と聞き間違って、試料をなめて偶然に見つかったというエピソードもあるくらいです。
さて、甘いと感じるのは、その物質が、舌の表面にある味細胞、さらにその表面にある甘味受容体という部分に結合するから。
つまり、味覚というのは、それ自体が生物と化学が合わさった話、つまり「生命化学」なんですね。
そのあたりの面白さはまた別の授業のお話。
今日紹介するのは、合成の実験の様子です。
氷-食塩浴で冷却しながら、シリンジを特殊なゴム栓に突き刺して試薬を加えていきます。
試薬が加わると反応熱によって反応溶液の温度が上がるので、温度を管理しながら少しずつ、試薬を滴下していきます。
温度が上がりすぎると反応がうまくいきません。
また、反応容器の上部には塩化カルシウムを詰めた太い管をつけて、外から反応容器内への水蒸気の侵入を防いでいます。
水蒸気が侵入すると、試薬が水と反応してしまって、予定の反応がうまくいきません。
1年生にしてはかなり本格的な合成操作です。
このような操作を何回か経て、フェニルアラニン(アミノ酸)からアスパルテームをつくっています。