サイエンスリーダーズキャンプに2年連続の採択

このFIRSTは、ナノ、バイオ、ナノバイオの最先端で活躍できる人材を育成するためにつくられた学部で、少人数できめ細やかな指導体制のもとで学生を教育しています。

講義や実験で専門的な知識や技術を学ぶわけですが、社会に出ると「企画力」や「指導力」など授業では学ばない能力も必要とされてきます。FIRSTでは、「企画力」の育成に、様々な委員を選出し、自分たちでいろいろな企画を立案してもらいながらその能力の育成を行っていますが、「指導力」の育成では、中高大連携事業が重要な役割を果たしています。

中高大連携事業とは、中学生、高校生にFIRSTの施設を利用して実験体験させたり、中学や高校の理科の先生に実験指導をするものです。FIRSTの学生さんたちは、TA(ティーチングアシスタント:実験指導、補助員)として事業に関わります。

これまでに学生実験や講義で学んだことを人に教えてみて、また、実験を指導する中で質問されてみて初めて自分がわかっていなかったことや中途半端にしか理解していなかったことに気づくこともたくさんあります。指導を経験することで、自分に対して講義や実験での学習の到達目標も定められるようにもなるでしょう。そのような経験を積んでもらうために、今年も科学技術振興機構が主催する「サイエンスリーダーズキャンプ」に申請しました。

このサイエンスリーダーズキャンプは、次世代の優秀な研究者を育成するために、その指導をする先生方に最先端の研究を体験してもらうためのプログラムです。FIRSTでは、昨年度も「中高大産接続教育を通じた次世代の医療・健康産業を担う人材育成」というプログラムでサイエンスリーダーズキャンプに申請し、採択を受け、プログラムを実施しました。たくさんの学部生がプログラムの実施にTAという形で関わり、多くの有益な経験を積ませてもらいました。

そのこともあり、今年も「理系研究者が教える課題研究の見つけ方、進め方、纏め方」というプログラムを申請し、無事に採択を受けました。昨年度3大学、今年も5大学のみの実施で、連続採択を受けたのはFIRSTだけでした。また、うちを除けばすべて国公立大学のみが実施機関として採択をうけている様です。

数年前まで自分たちが教えを受けていた高校の先生方に実験やその関連知識を教えることは、難しいことかもしれませんが、だからこそそれを経験することにより多くのことを学ぶことができます。TAを経験することで、新しい目標や課題を見つける学生さんが今年も増えることを望みます。

【2011年度採択大学】
・お茶の水女子大
・北海道大学
甲南大学

【2012年度採択大学】
・東北大学
・埼玉大学
・東京学芸大学
甲南大学
・愛媛大学


指導主任面談

久しぶりの更新です。

今年も49名の新入生が入学してきました。
彼ら彼女らが入学して2ヶ月が過ぎ、新入生も学校生活に慣れてきた頃でしょうか?

学校生活に慣れたかどうか、GW明けから指導主任面談が行われ、今日がその最終日でした。
高校から大学に入って勉強のスタイルも変わり、戸惑いながらも頑張っている学生さんが多くいるようで安心しました。

ただ、初めての試験は6月初旬にやってきます。
油断せずにこの調子で頑張って欲しいですね。


タマゴが先か、ニワトリが先か?

物事にはセオリーというものがあり、その順番どおりに物事が執り行われることが多くあります。

これは教育の世界も同じで、セオリー通りにすると学んだことを定着しやすいと考えられています。しかし、あまりにそのセオリーに固執し、囚われてしまうと、むしろ教育効果が失われたりする場合もあったりします。

FIRSTで学ぶ研究分野では、「実験」と「講義」は表裏一体で、どちらもしっかりと学び、修得しなければなりません。仮にどちらか一方の修得が不十分であったり、欠けたりすると、優秀な研究者にはなることが難しくなっていきます。だからこそ、しっかりと学びたいところなのですが、ではどう学ぶのが効果的なのか? 

研究分野におけるセオリー通りの考え方では、①実験技術に関わる基礎知識をしっかりと講義で学び、②学んだ事を実験によって確認する、という方法がよく用いられています。

確かに実験をするときに何をしているのかわからないまま、やってしまうより、何をやっているか事前に講義で学んでおけば、実験に対する理解も飛躍的に上昇する気がしてとても合理的な「セオリー」だと思うのかも知れません。

ただ、実際に自分でやってみると理想と現実は違うものなんですよね。実験をしてみて初めて興味を持つ分野があったりもします。やった後に調べてわかることもたくさんあります。最初に講義で学んだからといっても、膨大に習う講義内容をきちんと理解できていないこともしばしばあります。

また、実際の研究はセオリー通りなのか?といえば、そうでもなかったりします。研究開発はそもそも未知の分野。最初に何を学べばいいのか???

設立準備委員会でもいろいろな議論が交わされました。ただ、この問いに関して、正解も不正解もないんです。最終的に我々が選んだのは実験をしてみて、おもしろければ深く学んでいくというスタイルです。

よかったか悪かったかは、わかるのはだいぶ先のことだと思いますが、学生実験に取り組む学生を見たり、彼らが学年を進行して話を聞くところでは興味・関心の喚起に繫がっているように思えます。

いずれにせよ、表裏一体となる「実験」と「講義」を関連づけながら学び、成長して育ってくれれば嬉しい限りです。


父母の会支援キャリアウィーク(4)

去る12月9日に、父母の会支援キャリアウィークの第4回目のセミナーが開催されました。

今回は、千葉県松戸市にあるプレシジョン・システム・サイエンス株式会社(PSS)より狩長 亮二 氏をお招きし、ご講演いただきました。

PSSは1985年に設立されたベンチャー企業で、臨床検査を自動化する機器の開発をされている会社さんです。

健康診断や病院で病気の検査をされた方も多くおられるでしょう。インフルエンザなどで綿棒をのどや鼻の奥に入れられ、しばらく経つと赤い線が出る、出ないでその発症を検査するようなキットは皆さんもよくご存じではないでしょうか。よくテレビなどでも取り上げられますが、ぼんやりと検査結果が現れたり、測定値がぶれてしまって陽性かも知れないという擬陽性という結果が現れることがしばしば問題となっています。

人の手で測定すると、どうしても誤差が生じてしまいます。一方、そのような測定を自動化してしまえば、溶液を入れる制度も向上し、測定誤差も大幅に低減され、陽性、陰性もはっきりとわかるようになるそうです。PSSでは、自動化に加え、自社で開発する独自のキット、精製法などを組み合わせてさらに感度を向上し、世界的にもその検査精度の高さは定評があるそうです。

狩長氏は、化学系の出身としてPSSに採用され、今は国内外の企業相手に自社製品の開発を行うための交渉や自社製品の説明をしたりもしているそうで、英語で苦労する部分も多く、「大学では英語を学んでいた方が良い」というアドバイスもありました。また、高精度化に関わる国の大型プロジェクトにも参画しているそうで、忙しいながらも充実した研究生活を送っていることをお話いただけました。

将来、やりたいことやれることをやれるというのはとてもよいことですが、大学で何を学んでおくべきか、やはり企業に入社してがんばっている人の意見を聞くことも重要ですね。

PSS


父母の会支援キャリアウィーク(3)

先週の金曜(2日)は、父母の会支援キャリアウィークの第3回目のセミナーが開催されました。

今回は、株式会社耐熱性酵素研究所より奥 崇 社長をお招きし、お話しいただきました。
耐熱性酵素研究所は2003年に設立されたバイオベンチャーで、耐熱性酵素に関して開発や精製に独自の技術を持たれている会社です。

酵素反応は、一般的な有機合成反応では、何段階もかかる合成反応を1段階や2段階という数少ない回数で行うことができます。それは、酵素の持つ高い基質特異性のおかげであり、起業における製造プロセスのコストダウンにつながります。また、有害であったり、危険な試薬を使わず、水溶液で反応ができることも特徴として挙げられ、クリーンな化学反応触媒として興味が持たれています。
セミナーでは、酵素の話、特に「企業で必要とされる酵素の話」などを中心にお話いただき、耐熱性酵素研究所さんがどのようなスタンスで研究開発を行っているかご紹介いただきました。また、ベンチャー起業や経営、企業と大学との違いなどについても興味深いお話をしていただけました。

耐熱

研究者として、研究をする場合に、「うまくいくかどうかわからない、でもうまくいったらおもしろい」というテーマにはとても興味を惹かれます。奥社長がおっしゃられていた「うちではできません、とは決していいません」という言葉に、同じ研究者として強いシンパシーを感じました。できないと先入観を持ってしまうと些細な変化を見逃してしまって、しいては重要な発見すらも見逃してしまうことも多くあります。できること(結果が出ることがわかっていること)に挑戦するのではなく、できないかもしれないこと(やってみても実際に結果が出るかどうかわからない)に挑戦をし、結果が出ない苦労を乗り越えて結果を得たときの達成感を信じて研究をすすめる、まさに「研究者魂」がそこにあるのだと思います。

どんな会社で研究を行うか、自分がどんな研究を将来したいか、今のうちに考え、いろいろな人の話を聞いて進路選択をしてほしいですね。