(「水曜と木曜は2年実験の日(2)」から続く)
2年生の学生実験の紹介、最後は「ペプチドの合成」です。
受験生のみなさんは「ペプチド」や「タンパク質」のことはご存知かと思いますが、念のため、簡単に説明しますと・・・。
一般的にはアミノ酸が2〜50個程度つながってできた鎖のような物質をペプチドと呼び、さらに多くのアミノ酸がつながった、より長いものをタンパク質と呼びます。ただ、タンパク質の「アミノ酸がつながってできているという」という構造上の特徴を指して、タンパク質はペプチドである、といっても間違いではありません。
(この授業では、樹脂ビーズの上でアミノ酸をつなげていく「固相合成」という実験技術を習得します。上の図で、アミノ酸構造中の◯の色の違いは、アミノ酸の種類の違いを表しています。)
生体内のペプチドでよく知られているものにはインスリンがありますね。最近では、アルツハイマー病に関連してアミロイドβ(ベータ)というペプチドも注目を集めています。
(血糖値を下げる働きをするホルモン「インスリン」もペプチド。2本のペプチド鎖が途中2箇所でつながった構造をしています。)
こちらが実験の様子です。
(上から)実験操作の説明、樹脂ビーズの秤量、樹脂ビーズの洗浄、反応(試薬の添加や撹拌)、反応の確認
さて、 ペプチドのような生体内で働く分子を、生体外で化学的につくる、ということには、どのような意義があるのでしょうか。大きく分けて2つあります。
1.からだの中の分子のことを知る
実際に人間の手でつくって調べてみることによって、からだの中の分子の性質や働きをより深く理解することができるようになります。例えば、酵素を構成している「或るアミノ酸」を「別の種類のアミノ酸」に変えてみることによって、酵素におけるそのアミノ酸の働きを確かめることができます。もし、別の種類のアミノ酸に変えて酵素が働かなくなったなら、「元のアミノ酸」には酵素にとって欠かせない働きをしていた、ということがわかるわけですね。
2.からだの中の分子を超える分子を作る
実際に人間の手でつくったり調べてみたりする経験を重ねることによって、からだの中の分子を超える性質や働きをもつ、新しい分子をつくれるようになります。例えば、副作用のない薬や、空気から役に立つ物質を生産できる触媒などを設計するヒントが得られたりします。
これが生物学と化学を融合的に学んだり研究したりする、生命化学のおもしろさですね。
うーん、今日の後半は受験生向きというよりも、うちの学生に向けた講義のようになってしまいましたね。