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今週の2年実験

 今週の2年実験は、(ナノ実験とナノバイオ実験は前回紹介したので)バイオ実験を紹介します。
 バイオ実験では複数のテーマを並行して進めています。内容の一部は、1年時にすでに行っているものと同じですが、そのかわり「自分で段取りをして、計画をたて、準備し、実験を進めていく」ことが求められます。しっかり内容を理解していないといけません。
 
【遺伝子診断】
 遺伝子診断という言葉は高校生の皆さんもよくご存知だと思います。遺伝子は酵素等の設計図にあたるものですから、遺伝子を調べることで、どのようなタイプの酵素を持っているかがわかります。よく知られている例は「酒に強い・弱い」ですね。エタノール(アルコール)を、アセトアルデヒドを経て酢酸にまで変換する「酵素」の働きが正常な人はお酒に強い。逆に、それらの酵素を持っているが、その働きが弱い人はお酒に弱いというわけですね。
 で、遺伝子診断の方法ですが、まず、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)という方法で、調べたい酵素の設計図に相当する遺伝子のコピーをたくさんつくります。そうしないと、もとの遺伝子だけでは量が少なすぎて、うまく分析できないからです。
PCR
(PCRで機器の操作に苦しむ学生。「以前に教えたこと」を二度三度教えるということは、教員は基本的にしません。苦しんで自力で前に進んだ分、よく身に付くのです。)

 この実験のおもしろいところは、「何を調べるか」を自分たちで考えて、遺伝子のどの箇所のコピーをつくるかを設計する点にあります。ある学生は「血液型」を、ある学生は「酒に強いかどうか」を、また別の学生は「朝に強いかどうか」などを調べていたようですね。
 今日は、PCRで増やした遺伝子を電気泳動という操作にかけて、遺伝子の型を調べる、つまり、診断の結果を出す過程に取り組んでいました。

gel_result
(さあ、遺伝子診断の結果は? )
gel_result2
「先生。結果以前に、私の遺伝子が見えないんですが。」
「遺伝子がない? 新人類かも?」

【遺伝子組み換え】

 先週までにGreen Fluorescent Protein(GFP、緑色蛍光タンパク質: ノーベル賞で一般の方にも有名になったあの「光るタンパク質」です)の遺伝子配列を大腸菌に組み込んであります。今週はその大腸菌を培養して、狙い通りに大腸菌がGFPをつくりだしているか、確認しようという実験です。GFPは光るので遺伝子がきちんと導入できたかどうかの確認が簡単、これがGFPがバイオテクノロジーによく使われている理由ですね。
GFP

(「光るタンパク質」が取れたことを確認。白黒画像なので緑には見えませんが、白く光っているのがGFP。) 
 

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(遺伝子組換大腸菌によってつくられたタンパク質をゲル電気泳動で分離。画像は、ゲルを剥がして、ゲル内で分離されたタンパク質をこれから確認するところです。使っているヘラは、そう、お好み焼きのコテ。細かい作業にはもんじゃ焼き用の小さなコテも使います! )

 さて、1、2年生の実験は、これで5週間の実験を終えたことになります。来週からは、ナノ→バイオ→ナノバイオ→ナノというローテーションを行って、違う分野の実験に取り組んで行きます。頭の切り替えが必要ですよ!

今週の1年実験

 1年生の実験は今日で5日目。これまで3つの班に分かれて、それぞれナノ、バイオ、ナノバイオと3つの分野の実験を行ってきましたが、今日で一区切り。来週からは、各班、違う分野の実験に取り組んでいくことになります。

 ナノ実験では〈再結晶〉に取り組んでいました。再結晶というと高校化学の教科書でも初めの方に登場するので、初歩的な実験と思われるかもしれませんが、溶質と溶媒の性質の深い理解が求められ、さらには実験者のセンスと経験まで問われる、プロにとっても大変難しい実験なんですよ。

recrystalization1recrystalization5recrystalization4

このように溶媒によって析出の仕方がまったく違います。なぜか? レポートにしっかり考察を書いてくださいね。

 最終回ということもあって、実験の合間にはこれまでの実験内容をまとめたり、データを整理する姿も見られました。実験が終われば一週間かけてレポート作成。ここで調べれば調べるほど、考えれば考えるほど、確実に力がつきます。逆に、締め切り直前にあわててレポートを書いているようでは ...。他の授業の宿題もあって大変だと思いますが、頑張って!

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(バイオ実験で、パートナーと実験内容を確認し合ったり、実験ノートを整理する学生たち) 


今週の2年実験

 今週の2年実験の様子をご紹介します。2年実験(科目名:ナノバイオラボ1A)は水・木曜日の午後に行われています。なお、1・2年生の実験は、ナノ・バイオ・ナノバイオの3グループにわかれてそれぞれの実験を行い、ローテーションすることによって半期で全テーマを行うかたちになっています。今回紹介するのはナノ実験とナノバイオ実験です(次回はバイオ実験を紹介します)。

ナノ実験【アルドール反応によるカルコンの合成】
 アルドール反応は、炭素原子と炭素原子の結合をつくる反応です。有機化合物の骨格は炭素でできていますので、アルドール反応はまさにその骨格をつくる反応として、とても重要な反応です。生体内でも糖の合成に使われています。
 実験しているみなさん、アルドール反応における求核体生成や求核攻撃、それから脱水によるα,β-不飽和カルボニル化合物生成のメカニズムは去年の講義で習得済みのはずですね .....忘れている人は復習しておいて下さいね。
 なお、下の画像はろ過によって生成物のカルコンをろ紙上に取り出しているところです。
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ナノバイオ実験【自分で設計したペプチドの固相合成】
 この日は、合成したペプチドの収量を分光光度計を使って求める実験をしていました。ペプチドには色素分子を結合させていますので、その色素分子による光の吸収を分光光度計という装置を使って調べてやることで、合成されたペプチドの量(収量)がわかります。左下の画像は、光の吸収とペプチドの濃度の関係(Lambert-Beer則)について書かれたテキストを見ながら、ペプチドの収量を計算しているところです。
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 また、右上の画像は蛍光光度計を使ってペプチドに結合させている色素由来の蛍光(発光)を確認しているところです。私「色素は何を付けたの?」学生「ダンシルです。あと、トリプトファンもあります。」私「ダンシルとトリプトファンが近くにあると・・・?」学生「FRETが起こります。」 うむ、よろしい。すらすらと学生が答えたので、指導にあたっている臼井先生もニコリ。
 なお、このあと、ペプチドが分解されるとダンシルとトリプトファンが離ればなれになり、FRETという現象が観測されなくなる、ということを確認する実験を行うそうです。

一年間の進歩

 少し前まで1年生だった2期生たちですが、2年生になってより高度な実験に取り組んでいます。

 ある2期生が「自分たちは授業でわからなかったところを先輩にいろいろ教えてもらっていたが、2年生になって後輩に質問される立場になった。恥ずかしくない先輩にならないと。」と話していましたが、みんなそういう意識があるのか、実験での動きが昨年までとは違います。 例えば、1年生のときには一つひとつ次の操作を教わりながら実験していた学生たちにも、自分で次を考えながら手際よく実験を進めていく姿勢が見られます。

 1期生が2年生になったときもそうでしたが、春は、「学生たちの1年間の進歩」を感じる季節ですね。

 下の画像は2年生の実験の様子です。なお、1−2年生の実験は、3つのグループに分かれて3つのテーマ(【ナノバイオ実験】【ナノ実験】【バイオ実験】)に順番に取り組んでいきます。

【ナノバイオ実験】ペプチドの合成(ペプチドは医薬品にも使われる生体高分子です。画像はアミノ酸を連結させていく操作をしているところです。)
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【ナノ実験】有機化合物の合成(自分たちで合成した化合物を、反応混合物の中から抽出という操作で取り出しているところです。)
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【バイオ実験】遺伝子クローニング(大腸菌に導入するDNA分子を作製しているところです。)
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1年生の実験

 先々週から新年度の授業がはじまっています。2年生や3年生もフレッシュな気持ちで新しい学習に取り組んでいると思いますが、やはり、一番どきどきしているのは1年生でしょうか。

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 上の画像は本日行われた1年生の実験科目「ナノバイオラボベーシックA」のバイオ実験の様子です。テーマは大腸菌の遺伝子組み換えなので、バイオテクノロジーに興味がある学生にとっては特にやりがいのある実験だと思います。(この機会に原理もしっかり学んでくださいね。)

 実験も2日目ということで、だいぶ打ち解けあった雰囲気で、順調に2人1組の実験をこなしている様子でした。この2週間で、もうみんな、マイラボで結構話をしたりしてすでに仲良くなっているようです。

NBLB-nanobio

 こちらはナノバイオ実験でデータ解析に取り組んでいる様子です。実験は、原理を理解したり、実験操作を習得することも大事ですが、実験結果をきちんと解析できるようになることも同じように大事ですので、みんながんばってね。この実験で身につけるExcelの表計算やグラフ作成は、これからいろいろなところで役に立ちますよ!

NBLB-nano

 ナノ実験では、カラムクロマトグラフィーという、混合物を分離精製する実験をしています。将来は医薬品などを合成するスキルを身につけたい!というような方には基本となる実験技術です。また、この実験を通じて、溶媒の性質や、物質間の相互作用など、生命化学の基礎知識を身につけることができます。奥深い実験です。