カテゴリー別アーカイブ: 授業

後期の授業が始まりました

先週の土曜日(17日)から、後期の授業が始まっています。その17日には、前期の3年生実験の発表会が行われました。

2時間のポスター発表は、どの発表も内容が充実していたこともあり、あっという間、に終わりました。 3年生の、それも4月から7月までの4ヶ月という短い実験期間でしたが、卒業研究レベルのものも少なくなかったように思います。

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(ポスター発表の様子。同級生たちの発表を聞くのも、良い刺激になりますよね。)

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(熱心な2年生も聞きに来ていたようです。)

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(外国人ポスドクもディスカッションに参加してくれました。英語は使う必要性を感じないとうまくなりませんので、学生の皆さんには、こういう機会に積極的に英語を使うことにチャレンジしてほしいですね。)

さて、後期は、前期とは違う実験テーマに取り組むことになってますので、また一から勉強をし直し、新たな実験技術も身に付けなければなりません。積極的に取り組んでいけば、この1年間で相当に広くて深い経験を積むことができるはずです。


科学と産業政策

一昨日から本日まで「科学と産業政策」という科目の集中講義が行われていました。

変わった名前の科目だなあ、と思われるかもしれませんが、産官学連携という言葉があるように、大学での研究・教育と、行政や産業界との連携は今や不可欠なものとなっています。 特に、大学での研究・教育を「社会への貢献」という視点から見るときには、官・産も含めた社会全体の中の大学の役割ということを考える必要があります。学生にもこのような広い視野をもってもらって、大学での学びの方向性を考えたり、新たな学びのモチベーションにしてもらおう、というのがこの授業の狙いです。

FIRSTには「産」から講師をお迎えしている授業はたくさんありますが、「官」の実務家から直接教わることができるのはこの授業だけです。調べたわけではありませんが、全国的にも珍しい授業ではないでしょうか。しかも、今回は、兵庫県の産業振興局、政策労働局、工業技術センターの方々から、兵庫県の特徴・経済情勢、国際競争から放射性物質除去の研究開発まで多種多様なお話を伺うことができて、受講生の視野は、狙い通りに大いに広がったと感じています。

また、昨日は大型放射光施設SPring-8内の兵庫県の実験施設を見学させていただき、放射光ナノテク研究所所長にも直々のご案内と講義をしていただきました。本当にいろいろな方々にFIRSTは支えていただいております。今回の授業をコーディネートして下さった、また、学生に貴重なお話をして下さったご関係の皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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(大型放射光施設SPring-8にて。画質が悪いのはブログ編集者の携帯電話が古いため。後日、学生が最新のスマートフォンで撮影したきれいな画像に差し替えます。)


企業が大学生に求める能力とは?(4)

さて、企業が大学生に求める能力、ひとまず今回が最終回です。

前回書いた、研究で培うことのできる「能力のホールパッケージ」とはどのようなものでしょう?
研究のプロセスに沿って、箇条書きにしていきたいと思います。

・文献調査/情報分析能力
 研究とは未知のコトを明らかにしたり、世界初のモノを創造したりすること。したがって、まずは論文等の文献を調査して情報を分析し、「何が未知なのか」「何が既にあるのか」という事実を把握する必要があります。

・専門分野の基礎知識
 文献を調査したり、その内容を理解したりするためには、専門分野の基礎知識が欠かせません。

・問題発見/問題提起能力
 未知のコトや未創造のモノであっても、解明して面白くもなければ、つくっても何の役にも立たない、というようなものは研究の対象としてもしょうがありません(長期的にみて面白いか、役に立つか、の判断は本当に難しいんですけどね)。何に取り組むべきか、発想と見極めが求められます。

・問題解決能力/計画力
 取り組むべき課題を見出したら、次はどう取り組むか? です。天才的なひらめきがある人は素晴らしいのですが、ひらめきがない人も、たくさんの研究事例から「定跡」を身につけることで研究者として十分な問題解決能力/計画力を身につけることができます。

・実験技術
 言うまでもありませんが、実験技術がなければ実験することができません。実験を必要としない科学・科学技術もありますが、ナノやバイオは多くの場合、実験によって新事実を発見したり、新物質を創造したりします。

・コミュニケーション力
 研究というと、一人で没頭しているイメージがあるかもしれませんが(そういうタイプの研究者もいないことはありませんが)、学生の研究は、教員とはもちろんのこと、まわりの人たちとコミュニケーションを取りながら協力し合って進めていくことが多いです。また、会社では上司を納得させたり、部下を指導することもあり、コミュニケーション力は重要です。

・ 考察力
 実験結果という客観的事実を読み取って、それが物語っている事柄を論理的に考え、纏めていく能力です。さらに、考察の途中で生まれた疑問や仮説を検証する実験や調査の計画を立てる力につながっていきます。実験結果を「マーケット調査結果」や「ユーザー動向調査結果」などにおきかえて考えてみれば、広く必要とされる能力であることがわかると思います。 

・プレゼンの能力とスキル 
 研究成果を論文のかたちにまとめて発表したり、壇上やポスター前に立って口頭で成果を伝えたりする能力です。成果の「どこが新しいか」「どこが優れているか」などを、背景や比較対象をうまく示しながらアピールしていきます。また、企業では、研究を行う以前に、「こういう研究に取り組みたい」「こういう成果が期待できるからこれをやれば会社のためになる」と上司を説得しなければいけません。

いかがでしょうか。このような能力が求められるのは研究職や研究開発職だけではないことは、すぐにわかっていただけると思います。例えば、ナノやバイオの実験とは縁のない、総合職、営業職でも、上に挙げた能力は必要ですよね。

でも、このような能力を磨くためには、何か、本気で取り組む材料が必要なんですね。その「何か」がFIRSTでは、ナノやバイオだ、ということなんです。

前々回、FIRSTで学んでいる内容は、それを直接活かして仕事をする人にとっても、そうでない人にとっても役に立ちます、と書きました。話の結論が見えてきましたか?

結論A:ナノやバイオの研究者になろうと人にとってはFIRSTで学んだことは直接役に立ちます。

結論B:まったく異なる、例えば、文系的な職種に就こうと思っている人にとっても、FIRSTで学んだ内容を活かして研究に取り組むプロセスが、いろいろな力を身につけるのに役立ちます。

ということなんですね。もう一つ、AとBの中間を付け加えさせてもらうと、

結論C:ナノやバイオ以外の理系の道に進もうと思っている人にとっては、研究に取り組むプロセスで身につけたことは当然役に立ちます。さらに、ナノやバイオとは直接関係ないと今は思われていることを、ナノやバイオを関連づければ、新しいことが生まれます。脳科学と情報科学が結びついてニューラルネットワークが生まれました。酵素と電極が結びついてバイオセンサーが生まれました。大学で学んだことと違う分野に進んだら、それはまったく新しいものを生み出すチャンスだと思って下さい。

4回にわたって、企業が大学生に求める能力のほとんどは、研究を通じて身につけることができる、という話を書いてきました。

研究ができるようになれば、どんな仕事だってできるはず! でも、研究が難しくて手に負えないもののように感じるからといって、研究を楽しめないからといって、がっかりすることはありませんよ。研究がうまくできなかった人は、どんな仕事にも向いていない、というわけでは決してありません。仮に、最終的に、研究の能力のホールパッケージを身につけなくても、個々の要素をひとつでもふたつでも身につけていくだけで、大きな前進です。その能力を活かせる、やりがいのある仕事が世の中にはたくさんあるはずですよ!


企業が大学生に求める能力とは?(3)

前回、「企業が大学生に求める能力」を身につけるために、FIRSTでは「研究で学ぶ」ということを書きました。

FIRSTでは「研究で学ぶ」ために、次のような準備をしています。

  • 「研究」を意識してもらうために、同じキャンパス内に研究所があります。キャンパス自体もポートアイランドの研究開発ゾーンに設置されています。
  • 「研究」を感じてもらうために、学生専用スペース・マイラボの隣には実験室やミーティングルームがあります。
  • 「研究」を知ってもらうために、学生専用スペース・マイラボと同じフロアに教員研究室があります。
  • 「研究」に触れてもらうために、例えば授業が無い期間に研究室での研究補助のアルバイトを受け入れたりすることもあります。
  • 「研究」を実践してもらうために、3年生の学生実験は各人がテーマを選択します。

このように、通常は4年生や大学院生になってから取り組む「研究」を、早くから意識付けや教育に取り入れているのがFIRSTの特徴です。

もちろん「研究で学ぶ」理由の一つは、FIRSTの役割、つまり設置の目的が、ナノやバイオなどの先進テクノロジーに取り組む自立した研究者を養成することだからです。

しかし、前回から書いているように、研究者を目指さない人にとっては、研究は決して無意味なものではありません。研究者以外の進路を目指す人にとっても、「研究」は最も優れた教育コンテンツだといえます。それは、研究を行うことによって、学生たちが社会に出たときに必要とされる力をホールパッケージとして養うことができるからです。

ホールパッケージ(whole package)という言葉が大学教育に使われる言葉かどうかはわかりませんが、「すべてが揃っているセット」というような意味で、例えば、歌手のオーディションで 審査員にYou have the whole package ! と言われたら、ルックスも歌唱力もダンスもショーマンシップも全部揃っている! というような意味になります。

では、研究で培われる「能力のホールパッケージ」とはどのようなものでしょうか?

長くなりましたので、次回、研究で養える力について、企業が大学生に求める力と対応させながら書いていきたいと思います。


企業が大学生に求める能力とは?(2)

前回からの続きです。前回は、企業がどのような能力を大学生に求めているかについて書きました。

その記事に掲載したアンケートの回答結果をみると、重視されているのは「行動力・実行力」「バイタリティ・熱意」「協調性」、さらに「論理的思考力」「物事に対する理解力」「常識・マナー」「幅広い一般教養」「プレゼン能力・表現力」「我慢強さ」と続いていました。

では、これらの能力や姿勢は、授業を通じて身につけることができるのでしょうか?

もし「授業とはまったく関係ない」と思っている学生さんがいれば、その学生さんは「アルバイトや部活の経験の方が、社会に出てから役に立つ」と考えてしまい、大学での学びよりもアルバイトや部活を重視して、さらには、授業やゼミが、就業力・社会人力を身につけたり就職活動を行ったりするのに邪魔なものとさえ考えてしまうかもしれません。

実際に、(FIRSTにはまだ4年生はいませんので、前任地での経験談になりますが)4年生になって、ゼミや演習といった学業よりも、就職活動にばかり一生懸命になって、苦戦をする学生さんは少なくありません。早く就職を決めたい、そのためには多くの会社をまわりたい、と焦る気持ちはわかるのですが、私たちから見れば、「力」をつけないで就職を決めたいといっても、「そりゃ苦戦して当然」ということになります。

スポーツで言えば、練習をせずに、試合に出たい・活躍したい、そのためにはたくさんの試合にエントリーしたいから練習する時間は取れない、と言っているような状態でしょうか。 悪循環ですよね。 

そうならないためには、しっかり練習をして力をつけておく、つまり、早い段階からしっかり大学での学びに取り組んでおくことが大切なんです。

そうは言っても、授業、特に講義だけで、上に挙げた「企業が求める力」が身に付くとは想像しにくいかもしれません。では、どうすれば授業を通じて、企業が求める能力を身につけることができるのか?

FIRSTの用意した答えは、学びの中心に「研究」を位置づけることです。「行動力・実行力」「バイタリティ・熱意」「協調性」「論理的思考力」「物事に対する理解力」「常識・マナー」「幅広い一般教養」「プレゼン能力・表現力」「我慢強さ」・・・ これらはすべて研究を通じて身につけることができる、あるいは、研究を行う際に発揮することが求められる類のものです。つまり、研究の力を身につけることは、研究者になるためだけではなく、広く社会人としての力を身につけるために役立つものなんですね。

そこでFIRSTでは「研究で学ぶ」を学部の特徴の一つにしています。
次回は「研究で学ぶ」の中身について書きたいと思います。