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専門家による応用専門科目

先週の土曜日(11月5日)、一般公開が行われていましたが、別の階では、「医療関連研究開発論」という3年生対象の授業が行われていました。ご担当頂いたのは株式会社日立製作所中央研究所フェローの神原秀記先生。 

神原先生が開発された高性能な遺伝子解析装置(DNAシーケンサー)のおかげで、ヒトゲノム計画が早く完了したということで、「ヒトゲノム計画の影の英雄」と世界で賞賛されている方です。学生がうらやましい。

この「医療関連研究開発論」ように、フロンティアサイエンス学部には、ナノやバイオを「活かせる」分野や領域を学ぶ応用専門科目が多数あります。その中でも、特に専門性の高い科目では、学外から非常勤講師をお招きして授業をしていただいています。

例えば、医療。私たちは医療を支えるテクノロジーについて教えることはできますが、実際に臨床医療に携わっているわけではありません。薬についても同じことが言えます。また、上記の「研究開発」にしても、私たちは企業との共同研究は行っていますが、企業の開発戦略や開発の進め方を身につけているわけではありません。 

そこで、そういう内容の科目は、お医者さんや企業の研究開発部門の方に担当していただこう、というわけなんです。神原先生の場合は、ご担当された研究開発も普通のものとはスケールが違いますので、講義内容も戦略的・技術的なことだけでなく、もっと地球規模なトピックについてもお話し頂いているようです。


マイラボ奨学金

奨学金といえば、日本学生支援機構や甲南大学奨学金、その他財団や地方公共団体が運営する多くの奨学金があり、学生さん達の学びのサポートとなっています。

FIRSTの学生さんの多くもそれら奨学金をもらっていますが、FIRSTにはそれらとは別に学部独自の奨学金制度があります。FIRSTの学生たちの学びの拠点である「マイラボ」の名前を冠した「マイラボ奨学金」という奨学金です。学部が開設された2009年から始まり、今年で3年目となります。この奨学金で教科書を購入する学生もいたりして、学生たちにとってもいろいろな意味で目標となっているようです。(もらえるつもりでもらえなく、算段が外れてしまう学生さんも中にはいますが・・・)

このマイラボ奨学金には、2つの種類あります。

1つは、マイラボを活用して日々学び、学年で優秀な成績を修めた学生さんに与えられる栄誉奨学金です。各学年から2名程度に授与されます。
2011年度前期は、1年生は鈴木良順君、山口隼平君、富田恵麗沙さん、2年生は石川真実さん、山田葵さん、3年生は岡田亜梨沙さん、髙木琴味さんがその栄誉を獲得していました。

鈴木山口富田

山田石川岡田髙木

もう1つは、マイラボを活用し、学年の隔てなく、共に学ぶことを目的に、一生懸命がんばったフロアの学生さん達に与えられる奨学金です。マイラボは4フロアあり、各フロアで学年混合のチーム戦のような形で競い合い、もらえる奨学金となります。2011年度の前期は4階の学生さんがその栄誉を獲得していました。

就職するという将来的な大きな目標に向かって頑張ることも重要なことですが、一つひとつの科目を勉強して修得していく過程での段階的な目標も、自分が頑張っていることを認識できるとてもよい励みとなります。試験前には、ミーティングルームで教え合いながら共に学ぶ姿、見ていて我々もうれしく思います。

そんな環境っていいですね。
FIRST独自のマイラボ、設立の想い以上に活用してもらえることが我々にとっての励みにもなっているんですよね。


今週の2年実験

今週の2年生の実験の様子を画像で紹介します。

 【ナノ実験】金ナノ粒子の合成

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(金(Gold)もナノメートルサイズまで小さくなると金色ではなく赤色に。) 

 
【バイオ】遺伝子組み換え大腸菌の培養

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 (実験ノートを付けながら、考えながら、資料を読みながら・・・良い習慣が身に付いてきているようですね。)

【ナノバイオ】 ゲル電気泳動

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写真2
(あれ? 機器の設定が間違ってないか!?)


今週の1年実験

今週の1年生の実験の様子を画像で報告します。

【ナノバイオ】 人工甘味料・アスパルテームの合成

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【バイオ】 顕微鏡観察

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 【ナノ】 金属ナノ粒子による基板表面修飾 

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そうそう。実験しながら合間に実験ノートを書いたりプレゼン資料を作成したり、時間は有効活用しないとね。(描いているのは、笑い顔に見えるかもしれませんが、金属ナノ粒子の合成装置です。)


今週の1年実験(人工甘味料の合成)

 後期になり、1〜3年生は新しい実験・研究テーマに取り組んでいます。今日は、1年生のナノバイオ実験について紹介します。(1、2年生は、ナノ/バイオ/ナノバイオという3つの実験を、半期を掛けて順にこなしていきます。)

 1年次ナノバイオ実験の後期のテーマは「アスパルテームの合成」です。ゼロカロリー飲料に使われている人工甘味料ですね。 アスパルテームは、フェニルアラニンメチルエステルとアスパラギン酸という2つのアミノ酸からなるジペプチドです。今日、合成の初日は、フェニルアラニンからフェニルアラニンメチルエステルを合成する操作を行いました。

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 氷-食塩浴でメタノールをマイナス10℃に冷却しながら、試薬(塩化チオニル)を少しずつ加えていきます。 フラスコの真ん中から出ている白い曲がった管は、中に乾燥剤の粒が詰まっていて(塩化カルシウム管といいます)、フラスコの中に、外から空気中の水(水蒸気)が混入するのを防ぐ器具です。「水蒸気が入るのが嫌なら、栓をしておけばよいのでは?」と思われるかもしれませんが、反応に伴って塩化水素ガスが発生しますので、栓をしておくとフラスコ中の圧力が高くなって、温度計を刺しているゴム栓がピョーンと飛んだり、最悪の場合はフラスコが破裂したりする恐れがあるので、栓はできないんですね。塩化カルシウム管なら、ガスは外に逃げることができますので、そのような心配はありません。

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 室温に戻して、ドラフトチャンバー内で、来週まで撹拌しておきます。来週は、フェニルアラニンメチルエステルが生成していることを、クロマトグラフィーなどの方法で確認します。 

 文字にすると操作が少ない様に見えますが、彼らにとっては初めての有機合成なのに、空気中の水(水蒸気)の混入に注意を払ったり、温度を管理しながら試薬を添加するなど、なかなか神経を使う実験だったのではないかと思います(神経が行き届かなかった班もありましたが 笑)。来週までに、次の実験計画をノートを書いたり、反応機構を考えたりと、準備も忙しい。でも、その分、確実に成長しますからがんばってくださいね。