甲南大学には、在校生をサポートするためのいろいろな部署があり、それぞれの部署で、教職員が一丸となって学習、学生生活、就職活動などの支援に取り組んでいます。
例えば、学生部。奨学金、課外活動、アルバイト等、学生生活全般に関するサポートを行っています。フロンティアサイエンス学部の学生部委員は、村嶋先生。このたび、在校生向けの「学生部便り」という冊子に、夏休みの過ごし方に関して記事を書かれたそうなのですが、その中から「生命化学」っぽいところを抜粋してご紹介します。
メッセージの要点は「未成年の皆さんはもちろん飲酒厳禁ですが、成人に達している場合でも、度を超して飲んだり、飲酒を強要することは厳に慎みましょう。 」ということなのですが、その理由は以下のとおり。
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・・・ 人によってお酒に強い人、弱い人がいることは知っていると思いますが、これは訓練?によって強くなるというものではなく、その人の遺伝子によって決まっています。2003年に30億ものヌクレオチド(リン酸、糖、塩基がつながったもの)からなるヒトの遺伝子がすべて解読され(ヒトゲノムの完全解読)、自分と他人との違いは遺伝子の違いによること、またその違いは多くの場合、30億の塩基のうちの一つの塩基が異なることが原因であることがわかってきました。
お酒に強い人は、遺伝子のある部分がGGというセットであるのに対し、この部分がAGという人はお酒に弱く(GGの人の16分の1)、AAである人は生まれつき全くお酒が飲めません。
(バイオに興味がある方に向けて補足しますと、アルコールは体内で、毒性の高いアセトアルデヒドを経て、酢酸に変換されます。この「アセトアルデヒドから酢酸へ」の反応を触媒するのが「アセトアルデヒド脱水素酵素」で、上記の「遺伝子のある部分」というのはこの酵素の設計図なんです。つまり、同じ「アセトアルデヒド脱水素酵素」といっても・・・
GGの人はよく働く「活性型」の酵素を
AGの人は1/16の「低活性型」の酵素を
AAの人はほとんど働かない「失活型」の酵素を
それぞれ持っているというわけです。なお、フロンティアサイエンス学部では、「お酒に強いかどうか」を調べる遺伝子鑑定の実験を、これまでに何度か公開で行っています。もし次の機会があれば、このブログでも紹介しますね。)
こういったお酒に弱い人、飲めない人が無理に飲むと、急性アルコール中毒を起こして、最悪の場合は亡くなってしまいます。そのため、お酒を強要することはアルコールハラスメント(アルハラ)の一つとされています。
参考までに、アルハラとされる行為は次のようなものです。1.飲酒の強要、2.一気飲みをさせる、3.意図的に酔い潰す、4.飲めない人に配慮しない、5.酔って迷惑な行為をする。
また、お酒に強い人も注意が必要です。自分は酒に強いと自覚している人はついつい飲み過ぎることが多いため、アルコール依存症の人はほとんどがGGのタイプであるとされています。
お酒は本来、リラックスして楽しく飲むことで、さまざまな効用が現れるものだと思います。20歳をすぎた学生さんもお酒を飲む際には、節度をわきまえて、よいお酒を楽しむようにしましょう。
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