学生起業家(1)


フロンティアサイエンス学部のカリキュラムは、専門分野や応用分野を極める研究者・技術者志向の学生だけでなく、研究のシーズ(成果)と社会のニーズ(需要)を結びつけるコーディーネーターのような、若干文系的な人材の育成にも対応しています。
 
 だから、というわけでもないのでしょうが、1期生には、起業(会社を興すこと)を実践した学生がいます。大学生のあいだに起業するなんて、とても貴重な経験ですよね。そこで、これから3回にわたって、M君の起業体験をご紹介したいと思います。(本人の希望でM君とさせていただきます。)
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 ////あいさつ
 

 皆さんこんにちは。私は、甲南大学フロンティアサイエンス学部に在籍しているMといいます。実は、とある会社の社長も務めています。というのも2年前に会社をつくったからなのですが、今日は、起業してみて感じたこと、起業するとき大変だったことなどを書かせていただきます。

////どうして起業したのか?
 
 私が起業した大きな理由は3つあって、1つ目は、大学の長い春休みを使って何か思い切ったことをしてみたかったから。2つ目は大学でさまざまなことを学んでいる間に、コンピュータを活用することの必要性と、そのスキル獲得の重要性に気付いたからです。特にFIRSTでは実験をたくさん行うので、コンピュータを使ったデータの解析作業も多く、皆頑張って技術を習得します。でも、大学は授業や実験だけでもかなり忙しいので、そのようなスキルを子供の間にいくらか練習をしておいたら大分楽になるのではないかと考えたのです。しかし、子供へのIT教育はあまりポピュラーではなかったため、当初は高齢者のパソコン学習に付随する形で、子供が同時にコンピュータを学習するというようなビジネスモデルを考えていました。そして、これと通常の家庭教師を組み合わせ、さらにやや一般的なものに近づけたかたちのものを、広告を出していました。自営業でなく法人を選択したのは、広告における社会的信用を得る為です。しかし、残念ながらこの試みは上手くいかなかったため、現在は別の方向からのアプローチに変わっています。
 
 起業した3つ目の理由は、将来の自分の研究の継続的な資金調達源としての会社が必要だろうと考えたからです。私は、将来的には細胞レベルでの若返りの研究をしたいと考えておりますが、その研究にかかる時間とコスト、研究が成功する確率を総合的に考えると、どこかの企業内で企画を作っても通すのはおそらく難しく、また、その研究そのものを目的とした会社では最初から商業的に成功するのは難しいと考えました。となると、何か収益源が無ければ成り立ちません。まずはターゲット市場の大きい業界での会社を建て、ゆくゆくはその子会社として若返り研究に特化した会社を建てようと考えたのです。
 
 起業の成功率というのが一般的に非常に低いということもあり、はじめに考えたモデルがいきなりうまくいくとは限りません。将来のための経験と、その時に使える起業のためのデータやノウハウの集積を若いうちにつくるということも、大学生の間に起業した理由の一つです。
(つづく)