今週の1年実験(人工甘味料の合成)


 後期になり、1〜3年生は新しい実験・研究テーマに取り組んでいます。今日は、1年生のナノバイオ実験について紹介します。(1、2年生は、ナノ/バイオ/ナノバイオという3つの実験を、半期を掛けて順にこなしていきます。)

 1年次ナノバイオ実験の後期のテーマは「アスパルテームの合成」です。ゼロカロリー飲料に使われている人工甘味料ですね。 アスパルテームは、フェニルアラニンメチルエステルとアスパラギン酸という2つのアミノ酸からなるジペプチドです。今日、合成の初日は、フェニルアラニンからフェニルアラニンメチルエステルを合成する操作を行いました。

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 氷-食塩浴でメタノールをマイナス10℃に冷却しながら、試薬(塩化チオニル)を少しずつ加えていきます。 フラスコの真ん中から出ている白い曲がった管は、中に乾燥剤の粒が詰まっていて(塩化カルシウム管といいます)、フラスコの中に、外から空気中の水(水蒸気)が混入するのを防ぐ器具です。「水蒸気が入るのが嫌なら、栓をしておけばよいのでは?」と思われるかもしれませんが、反応に伴って塩化水素ガスが発生しますので、栓をしておくとフラスコ中の圧力が高くなって、温度計を刺しているゴム栓がピョーンと飛んだり、最悪の場合はフラスコが破裂したりする恐れがあるので、栓はできないんですね。塩化カルシウム管なら、ガスは外に逃げることができますので、そのような心配はありません。

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 室温に戻して、ドラフトチャンバー内で、来週まで撹拌しておきます。来週は、フェニルアラニンメチルエステルが生成していることを、クロマトグラフィーなどの方法で確認します。 

 文字にすると操作が少ない様に見えますが、彼らにとっては初めての有機合成なのに、空気中の水(水蒸気)の混入に注意を払ったり、温度を管理しながら試薬を添加するなど、なかなか神経を使う実験だったのではないかと思います(神経が行き届かなかった班もありましたが 笑)。来週までに、次の実験計画をノートを書いたり、反応機構を考えたりと、準備も忙しい。でも、その分、確実に成長しますからがんばってくださいね。