以前にこのブログで紹介したウイルスに関連した最近の出来事をご紹介します。
先日、我が家に通気口に設置するフィルターを販売するために、業者さん(おじさん)がやってきました。ちょうど通気口にフィルターが付いてなかったので、高速道路からの粉塵が入らないようにフィルターをつけておけばいいかなぁ・・・と思いつつ、販売営業のおじさんの営業トークを聞き始めました。
「このフィルターは普通のフィルターと違うんです。通気口に設置する市販のフィルターには外気から流入する有害物質やウイルスや細菌が付着して、フィルター上で大量に増殖しているんです。みなさんフィルターをつけることで安心してしまいますが、そこで増殖したウイルスや細菌が大量に室内に入り込んでいるんですよ! ところが、このフィルターには抗菌作用があるから、ウイルスや細菌も増殖することはありません。これからの季節、インフルエンザとかも流行していくと思いますが、このフィルターさえつけておけば、インフルエンザの季節も安心です! この効果で省庁の認可ももらっているんです!」
きっとエアコンのフィルターと同じようにカテキンがメッシュに練り込まれたフィルターなんだろうなぁ・・・と思いつつ、さらに聞いていると・・・
「今ならまとめて買ってもらうと安くできますし、今すぐ無料で取り付けます!」
おいおい、この不安を煽り、買わせる商法・・・かなりあやしい。
おじさんとしてみれば、買ってもらうためにたたみかけるように話した殺し文句だったと思うのですが、それよりも科学者としておじさんの会話でどうしてもしっくりこない点が1つ。
皆さんは、今のおじさんの話の中でおかしいところに気づきましたでしょうか?
それはインフルエンザウイルスの増殖のお話です。
たぶん世間一般では、このおじさんと同じことを思っている人は多くいるのではないでしょうか?
ウイルスというと、インフルエンザウイルスやノロウイルス、エイズウイルス、肝炎ウイルスなど、名前を聞いただけで、恐いと思うものばかり。誰しも絶対に感染したくないですね。
ただ、誤解している人も多くいるのかもしれませんが、ウイルスは科学的には生物ではなく、ウイルスだけでは増殖することはできません。
では、ウイルスはどうやって増殖するのか?
実はウイルスが増殖するには、宿主と呼ばれる細胞の助けが必要なのです。
ウイルスの感染・増殖は以下の通りで進みます。
1)まずウイルスは宿主を見つけ、その細胞の表面に付着し、細胞内に侵入していきます。(感染)
2)細胞内に入ったウイルスは、宿主細胞の蛋白質や遺伝子を作るシステムを利用して自分のパーツ(蛋白質や遺伝子)を増やしてもらいます。
3)十分に増やしてもらったら、それらを組み合わせてウイルスの形にくみ上げてから細胞の外へと飛び出していきます。
4)飛び出したウイルスは、次の宿主を見つけて、感染し、同様に増殖していくことを繰り返します。
インフルエンザのウイルスも、動物のノドや鼻の奥の粘膜細胞(インフルエンザウイルスの宿主細胞)に感染して、その細胞内で増殖させてもらうウイルスです。だから、空気中で勝手にウイルスが増えていくことはないんですよ。
逆にウイルスとしても、子孫を残すために感染することに必死なんでしょうね。
だから、変異を繰り返して、あの手この手で我々に感染する、まさに自然界の生存競争の中にいる図式が見て取れます。
そうそう、話がすっかりそれてしまった通気口フィルターですが、結局、あやしさもあり、通気口の数だけ買っただけでした。